つよい事三目程の勝ちにする
目算に寝浜はさせぬ碁の上手
いつも三目勝ちにつくる名人芸。ネハマは相手の色の碁石をあらかじめ隠し持って作る時にアゲハマの加えるインチキ。碁の上手はハマの数まで頭に入れているのでインチキはできない。
那智の石持たぬで知れる碁の力
強過ぎた碁の己れ淋しき
那智の石は那智黒石。誰が相手でも常に白番の上手。でも強すぎると相手に困る。
まっ黒な中に手を打つ本因坊
碁所も一手すきなり大晦日
本因坊は真っ黒な模様の中でも生きてしまう。幕府役人の碁所は多忙だがさすが大晦日には仕事がない。
本因坊家は安井家・井上家・林家とならぶ碁の家元四家の一つ。四家の中で最強のものが幕府により碁所に任命されお城碁の管理等の業務を行った。初代の碁所は安井算知。
碁の先生の余の智恵はなし
碁の会にぽんとしたのが師匠なり
碁の上手は世間にうとい。ぽんとしたは風采の上がらないの意。
気みじかに石取りたがるみそこし碁
下手は早打ち。みそこしは笊。
いつの間にごねたかしらぬ下手碁同士(どし)
下手の碁は七度(ななたび)かわる秋の月
下手同士が打つと知らない間に石が死んでいる。ごねるは死ぬの意。第二句は下手同士の碁は石の生死が度々かわる。七度かわる秋の月は狂言狂言『墨塗』の「男心と秋の空は一夜にして七度変わる」というセリフが下敷き。
むだ駄目をさしてへぼ碁は追落し
こちらからともに殺してやる下手碁
下手碁打ちは安易にダメをつめて追い落としを食う。黒石を殺すのは白番だけでなく自分(黒番)も殺しにいくのが弱い証拠。
切ると目が覚め膝をうつ下手碁打
下手の碁は勝って甲の緒が解ける
下手碁折ふし南無さんの声
雪隠で考えて居る下手っ糞
これらは解説不要だろう。