碁打ちの女房

碁の仲良しは妻の中わる

女房の嫌らう相碁三人

立つて碁を見る去なしたい顔

女房ハ碁好きの下駄へ灸点し

女房は長尻の碁客が嫌いである。仲間でくるとますます長時間になりうとまれる。碁を打っている傍に立って帰ってほしいという顔をすることもある。さらに早く帰れと碁客の下駄に灸をすえる。

相碁は技量が同格の碁仲間の意。下駄に灸をすえると長い客が帰るという俗信があった。箒を逆さに立てるのと同じ趣向だ。

 

うき/\と医と打つ碁盤出す女房

でも医者の碁仲間は大歓迎いそいそと支度をする。現金なものだ。

 

やれ/\まあ碁はての行燈さげる妻

碁を崩す音に家内ハ蚊屋つって

碁が終わるとやっと終わったのですかと行灯をかたずける。碁を崩す音を聞くと女房は蚊帳を釣って寝支度にかかる。

 

碁と言へば馴れて家内は先へ寝る

あぶりこのありど教へて女房ねる

一寐入りして起き女房碁をしかり

馴れてくると女房は先に寝るようになる。夜食の準備をして寝る世話女房もいる。でも気になると見えて途中で起きて来ていい加減にやめなと小言を言う。

あぶりこは餅網、ありどは収納場所の意。

 

女房の意見碁経にたまるふけ

女房とめてくれ碁のかたき様

碁経(玄玄碁経、中国の古典的棋書)で勉強していると女房が横に来て碁の苦情をいう。頭をぼりぼりかくとフケが碁経にたまる。碁敵が離してくれないので夜遅く家に帰ると女房はヒステリーで手が付けられない。碁敵さん責任を取ってくれ。

 

勝負付け根っから女房本にせず

俺はあいつより強いんだと勝敗表を見せても女房は頭から信用しない。勝負付けは碁の勝敗表。